症例名
椎間板ヘルニア
ついかんばんへるにあ
2012年2月2日 木曜日
症状 / 特徴
椎間板ヘルニアはダックスフント・ビーグル・ペキニーズなどに代表される病気ですが、
最近ではチワワ・トイプードル・フレンチブルドッグなどでも多く見られます。
症状には痛みのみを示す軽度なものから後駆麻痺などの重度なものまで様々あります。
後駆麻痺が起きている場合は、迅速に神経の圧迫を開放するために手術が必要でしょう。
原因としては軟骨そのものが先天的に弱いハンセンⅠ型と老齢性の変化によるハンセンⅡ型があり、 どちらも脊椎間に存在する椎間板物質が背側へ飛び出すことにより脊髄神経を圧迫することで症状が出ます。
診断
診察室内での検査方法としては身体一般検査及び各神経学的検査などによる疼痛部位および神経の圧迫部位の大まかな確認などを行います。
画像診断としてはレントゲン検査を実施することで、椎間腔の狭窄や椎間板物質の変性の有無を判断します。 また、迅速な手術が必要な場合は、脊髄腔内に造影剤を流し圧迫部位の特定を行います。
レントゲン写真
⇓において椎間腔の狭窄が認められ、↓において椎間板物質の変性が認められる。
また、MRI検査などで神経の圧迫部位の特定および圧迫の程度を確認します。
ただし、MRI検査は全身麻酔下で行われます。
処置
神経の圧迫が軽度なものであれば、内科治療と安静療法にて良化が得られる事もあります。内科療法に関しては、神経の圧迫による炎症を取り除く手段であり、圧迫をしている椎間板物質の吸収を促進する手段ではないため、安静が必要です。内科療法に併用する治療として、赤外線レーザーによる抗炎症作用を期待する治療もあります。
また、圧迫が中等度以上のものあるいは症状が進行性のもの、内科治療に反応しない症例に関しては外科治療が必要になります。
外科治療には、脊椎の一部を切除することで神経の圧迫を開放する方法があり、これを椎弓切除術と言います。
また、最近では人の椎間板ヘルニアの手術でも行われているレーザーにより椎間板軟骨を融解させて圧迫を取り除くPLDDという手術も行う場合があります。これは、内科治療と外科治療の中間の方法ととらえていただければよいかと思います。
経過および予後
内科治療に反応が良好な症例に関しては、予後は良好です。ただし、弱齢で症状が発症した症例に関しては、再発の可能性が高い為、軟骨を強化するためのサプリメントなどを継続し、今後の経過観察が必要となります。
手術が必要な症例に関しては予後は分かれます。
後駆麻痺を起していない症例では、リハビリなどを継続して行う必要はありますが、比較的良好です。
後駆麻痺を起している症例でも、麻痺の発生から24時間以内に手術を行う事が出来れば機能回復を望むことはできるでしょう。しかし、麻痺から時間が経過すればするほど、麻痺が残る可能性は高くなります。
ただし、椎間板ヘルニアに続発する症状として脊髄軟化症という病態があり、この病態に進行してしまった場合は予後は不良となります。
脊髄軟化症へと症状が進行してしまう要因は、現在のところ分かっておりません。